小林次郎布がたり新春号
体に不都合が診られ、入院することになりました。それが決まる前日、小学生にお話させて頂いた事を、その子が一年半続けてくれました。毎日学校の正門前を掃除し続けてくれたことを東京都が表彰してくれるとの知らせを頂いたのです。
更に一年前に、一緒に藍染をさせていただいたアメリカ人女性が、4月に帰国するので袴を藍染めしたい、手伝って下さいと頼まれました。
今まで藍染めを通して、人と触れ合わせて頂いた事が、今になって自分を頼って必要とされる人間になれていた、すごくうれしく感じました。
文京区湯島倫理法人会より、“湯島朝活タイムズ”に何か原稿をと頼まれまして、《世界一贅沢な布づくりをさせて頂いた男 小林次郎》で、掲載させていただきました。
以下にご紹介させていただきます。
「世界一贅沢な布づくりをさせていただいた男」
44年前、学校を終わった後、父に江戸時代の大名の奥方達が着ていた着物12枚を遺され
“お前はこの様な着物を染めることのできる職人を育てろ”
と言われ、その道しか知らない人生を過ごしてきました。
電気のコンセントのない時代の布、化学染料のない時代の布、そこにあるのは手織りと草木染めでした。
昭和、平成という時代を江戸時代的な生き方をしてきた様です。
でもそこでふと気がついた事に、この布はヨーロッパの人がシルクロードという路までつくって追い求めて来た「世界で最高の布」だということに気付きました。
そこに使われている色達は、髪が黒くて瞳の黒い黄色人種の日本人を美しく見せてくれる色達でした。絵の具、染料のない時代にそれを草の中に見つけた日本人、ってすごいですね。
・紫草の根より頂く「紫色」
・茜の根より頂く「朱色」
・梅陽樹より頂く「黄色」
・黄檗の樹皮の黄と藍を混ぜた「グリーン」
この4つの色です。江戸時代に生きた人達の、知恵と工夫、ってすごいですね。
今、私は昔の人達がやっていたことを真似しているだけです。
新しい便利な染料が沢山つくられてきたのですが、それは「株式会社」にとって、「染め手」にとって大変便利なのですが、表面のみの美しさになってしまい、奥に秘めている「心の美しさ」がありません。
自然の草木から生命と引き換えに頂く色には「奥の色」があります。それが見える様になるよう、追い求めてきた人生、それが私でした。
駒込六義園の染井門隣に「工房 布礼愛」があります。
ゆとりがなくなりかけている時に、江戸の世の生き方に触れにお出かけいただければ幸いです。
湯島朝活タイムズ 平成23年1月20日号より